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カタヒラギセン

片平義宣という男がいた。カメラマンだった。12月25日、きょうは彼の命日だ。16代つづく神主の息子なのに、キリストの誕生日に死んじまった。私はJRの仕事で、初めて山形の撮影現場で彼と会った。村人を全員集めての大がかりな撮影だった。彼は両足を踏んばり、からだじゅうから男のオーラを発しながらシャッターを切っていた。撮影後に会って挨拶したとき、彼は私の顔を見てニカッと笑った。その顔は、こころのきれいなヤクザだった。一瞬で、マブダチになった。

お互いの事務所がきわめて近いこともあり、それから毎週飲むようになった。夕方、開店前の中目黒の酒場のカウンター席にすわり、仕込み中の景色を見ながらふたりでいつもビールを飲んでいた。とにかく男っぷりのいい男で、スカッとしていた。ただお互いに男を張りあっていたので、つかみ合いのケンカも何度かあった。銀座の酒場をふたりで殴りあってバラバラに壊したこともあった。壁に掛かっていた数100万円の絵がぶっ飛んだ。

ある日の昼下がり、その片平義宣が「話がある」と電話をしてきた。「近くの喫茶店で会おうか」というと、「いや、そういう場所で話すことではないんだ、事務所に来てくれないか」という。そして、彼と会うと「オレ、癌なんだ。それもかなり進行した食道癌らしいんだ」という。目の前の景色がグラリと揺れた。

手術中の死亡率が30%だという。「ワタナベ、そばにいてくれないか」という。それで私は埼玉の癌センターで朝の8時から7時間の手術に立ちあった。手術室に送られる彼に、「ガッツだぞ! ガッツだ!」と意味もない言葉を投げかけた。

そして1年後復帰して、一緒に飲んだが、その半年後、彼は逝った。

片平義宣、見事にイイ男だった。享年52。私は49歳だった。もうちょっと生きたかっただろうな。もっともっと飲みたかっただろうな。きょうは、アイツの命日だ。あれからもう17年ほどのときが流れた。きょうはテーブルに、ふたつのグラスを置いて飲もう。とことん飲もう。

そうだ、片平義宣を偲ぶ会の言葉を私が書いた。それをデザインしたのは、やはり片平義宣と仲が良かった浅葉克己さんだった。
その偲ぶ会の招待状をさがすと手元に残っていたので、それを以下に。 


:::::::::::::::::::::::::::::::


笑顔の見事な男がいました

気持ちのまっすぐな男がいました

背骨のぶっとい男がいました

人を愛する男がいました


「ありがとう」としずかに言って

彼は散ったそうです

彼らしいです


散った花に茫然としたままの

私たちですが

片平義宣というみごとな花を

いま一度偲びたいと思います

彼を愛した人々と

彼が愛した人々と


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コメント 3

KEVIN

親友と呼べる人間は一生のうちに何人も現れるわけではないです。
その一人を失うということの辛さは、失った本人にしか分からないのでしょう。
片平さんにはお会いしたことはありませんが、心の中で合掌します。
by KEVIN (2015-12-25 13:52) 

渡辺裕一

KEVIN,、ありがとう。
キミも35年以上つづく親友です。新富町の竿工房マッキーズからの。
by 渡辺裕一 (2015-12-25 14:00) 

スキップ富岡

初めまして。スキップ富岡と申します。

義宣さんがお亡くなりになられていたとは。
広告の仕事と、雑誌の表紙の連載をさせておりました。

「やさしいヤクザ」正に仕事場では 最初怖い方だと思っておりました。
事実弟子の方には厳しかったと思います。

ご自分の弟子には 何を聞いても返事もしない。
そんな厳しい方でした。

私は立体のイラスト、大小ありましたが作らせて頂き
義宣さんがロケで撮影して下さってました。

私は物を作る者として対等に扱って下さいました。
自分でもNICONのカメラを用意し勉強しており
弟子の方には何一つ教えないのに
私が質問すると、弟子の方を遠ざけてまでまで
教えて下さいました。

一見強面に見せて実に優しい方と思いました。
雑誌、広告と2年ほど お付合いさせて頂いてる間に
NICONのプロ登記出来るまで成長させて頂きました。

心から感謝致しております。

それが17年も前だったんですね。
52才は早すぎます。

17年前2000年でしょうか?
2000年に自分もガンで母を亡くしました。

何処の代理店の方からも お何事を仰られます。
物撮りに関しては 義宣さんいしか撮れない写真がある。
どんなに真似をしても、他には居ない

故に物撮り界では 間違いなく 日本で一番高いギャラになると。

一緒に仕事をさせて頂き 幸せだったと思います。。

義宣さん、元々どちら出身の方だったのでしょうか?

国宝級のフォトグラファだったのに
とても残念でなりません。

教えて下さり 有難うございます。


スキップ富岡拝


by スキップ富岡 (2017-07-17 12:07) 

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